教育連載コラム―未来への戦略-

オンライン授業で行うプログラミング教育

コロナ禍で注目されているオンライン教育。ところでプログラミング教育については、オンラインブームの中どのような取り組みで進めているのだろうか。
今回は、BS日テレやHuluのプログラミング番組に御出演されていらっしゃる安藤先生にオンライン教育やプログラミング教育のお話を伺った。

AIを学ぶプログラミングを授業で行っている安藤先生


上松:先生は青山学院の高等部と中等部の授業を持たれていらっしゃるんですよね。
安藤:はい、青山学院中等部・高等部の生徒には1週間に2回、AI(人工知能)と情報を教えています。

上松:プログラミングができてもAIを教えられる人はとても少ないのですよね。
安藤:中学の先生でAIの授業は聞いたことないですね。自分は授業でPythonを使っているのですが、Pythonはライブラリーがすごくて関数が豊富にあり、Rとの連携もある。PythonはGoogle Colaboratoryを使えば、HTML5ベースの環境で作れますし、言語的にはPythonは簡単なので、入門としては生徒に良い環境を提供できます。
上松:海外だと小学校でPythonをやっているところもあるんですが実際、先生方には難しくないでしょうか。
安藤:はい、やはり最低限の知識は必要ですが、先生方にはPythonを是非覚えてほしいですね。
上松:小学生からやっているのとの違いってありますか?
安藤:自分は小学校の時にパソコンは無かったのですが、高校の時に親に買ってもらったのがきっかけです。当時としてはとても高かったのですがシャープのX1を買ってもらったんですよね。親に理解があったというか、今でも何で買ってくれたかわからなかったけれど買ってくれた。それで最初は意味がわからなかったけれど本を買って写経のようにプログラミングを覚えたのが最初です。
大学では、COBOLやFORTRANの授業があって、その時にプログラミングの基礎が培われたのだと思います。高校の教員になってからは、入試のシステムのマークシートリーダーの制御とか、時間割のシステムとか高体連の速報のシステムとか勝手に作りました。自分はプログラミングをやるうえで常に目標がありましたね。

目標さえしっかり持てば小学校から始めようと中学から始めようと、プログラミング上達にはあまり関係ないと思います。

こんな感じで教員生活の殆どをプログラムばっかり組んでいて、ただの変わり者だったけれど、時代が追いついてきたというか、最近になって周囲が理解してくれるようになりました。
また、プログラミングのおかげでテレビのオファーが来て番組の講師もすることができました。趣味が仕事になりました。

プログラミング教育をオンライン教育で行うメリット
上松:すごいですね。プログラミングが好きだった感じですね。
安藤:自分は独学でやってきたから、プログラムが動かなかったとき、デバッグするのが大変でした。ただ、同じ学校の先輩で凄いプログラマーがいて、その人に聞けるのが救いでした。
上松:プログラミング教育をオンライン教育でやるメリットってありますか?
安藤:オンラインでプログラミング教育は、優秀なプログラマーを発掘するきっかけになればいいと思っています。また、オンラインならば先生を選べるのがメリットであると思います。
未踏ジュニアや情報オリンピックに出ているような子供たちは教わるのではなく、自分でどんどんやっている。最後は才能とかセンスであとは努力がありますね。

プログラミングは暗記ではありません。わからなくなったらネットに書いてあるのでそこを調べる能力が必要です。ただ、高度なアルゴリズムだと動かなかったり、無限ループに入ってしまい原因がわからなかったりすることがあるので、そういう時に先生は助けてあげればよいかと思います。

最初に教わった先生で生徒に教える影響が違うと思っています。
「こんな簡単にこんなことができるのか!」と思ってもらい、目標をもたせることによって、プログラミングをできるためにプログラムを勉強しているのではなく、目標を達成するためにソースコードを組みプログラミングを勉強するということが大切です。
上松:確かに海外だと、ゲームを作る時に模造紙みたいなものに書いてキャラクターを決めたり、どうやるとクリアする、最終的にはどうするかを決めたりそれを実現するために、言語を決めるということをやっています。写経みたいな授業ってどう思われますか?

安藤:写経もあってもよいです。高校のとき、Oh!Xの雑誌を写経して、そこでデバッグを覚えました。写経は何百行何千行とやりました。ゲームをやりたいという目標があったからです。プログラミング学習を継続させるには個々の目標設定、モチベーションを上げることがとても大切だと思います。

コロナ禍の影響で休校となり、オンライン授業が増えたため、大学の先生方と毎週オンライン研究会をしています。オンライン授業はやはり双方向性でやることが重要なのだと再認識しました。その研究会で学んだことを授業にフィードバックさせ、実際の授業ではサーバーを立てて、マインクラフトの中に生徒一人一人のキャラクターを作り、生活しながらプログラミングをする環境を子供たちに与え、モチベーションを上げました。
ある面では対面授業よりもオンライン授業の方がパフォーマンスがよいと実感できました。

オンライン授業を生配信で行うメリット


安藤:オンライン授業を双方向性で行っている先生は、全国的には実際かなり少ないのではないかと思います。ネットで何十人もの先生方に相談を受けています。
上松:最近はオンライン教育ばかりに目が行くので、プログラミング教育はどうなっているのと聞かれることがあります。朝の会でZoomに繋がるのが精一杯って聞きました。

安藤:これからはどっちみち1人1台のパソコンを持つのですから、Zoomなどを使って、勝手に子供たちの間にゲーム感覚でプログラミングが広がっていくと思います。逆に先生方は、子供たちの方が出来るようになるので、大変になるかもしれません(笑)
上松:確かに生配信だったらちょっと間があいたり言い間違ってもそのまま修正なしで流れてしまいますし、生配信でやるより編集できますからしっかりしたものができますよね。また、何回も撮り直しできますからクオリティも高くなりますよね。
安藤:双方向性のオンライン授業はプログラミング教育にとって大事な要素だと思っています。
唯一のオンライン授業の欠点は、実習実験ができないことです。知識を与えるだけの一方的な授業だったらオンライン授業で十分だと思います。
オンライン授業の長所と短所を使い分けることもプログラミング教育にとって大切なことですね。

安藤: まもなく高校で情報Ⅰ・Ⅱがスタートします。そのための教師教育、情報の先生が受講できるオンライン動画を撮影しています。
またYouTubeのチャンネルを複数持っています。動画を通して多くの先生に「主体的、対話的で深い学び」の教育の形を伝えていきたいと思っています。

上松:安藤先生は先生方の参考になりそうです。もうブームになりそうですね。
安藤:コロナ禍で巻き上がったオンライン教育ブームが一過的なもので終わらないと良いと思っています。


オンライン教育を一過性のものにしないために
今回のインタビューでは、安藤先生の「オンラインであればよい先生からの授業も受けられるし良い関わりができる」というのが印象に残った。
コロナが収まればまた紙と鉛筆、黒板とチョークに戻ることのないように、安藤先生に色々とオンライン教育のノウハウを伺っていきたいと感じた。