社会と繋がり児童が輝くICT教育(後編)-印西市立原山小学校の取り組み-
前編に引き続き、印西市立原山小学校の松本校長へのインタビューをお届けする。
前編では、ICTを全ての教育活動の基盤として活用すること、持続可能な視点での学びや、子どもたちが自主的・自律的にICTを活用するための取り組み等についてお話いただいた。
上松:次はまちづくりについてお尋ねしたいのですが、この辺りはどんな場所になるのでしょうか。
松本:印西市は、大きく分類するとニュータウン地区と旧地区に分かれており、原山小はニュータウン地区にあります。この辺りは地盤が良く、データセンターが集まっており「DC銀座」と言われていてとても人気があるんですよね。アマゾンなどの大手企業もあります。東日本大震災でもライフラインに大きな影響はありませんでした。また、商業施設や森などの緑も多くあり、計画的に整備されているので、住みやすい街となっています。
上松:グランドも広いし空気もとても良いですね。子育ての環境にぴったりですね。近くにAEON(イオン)がありますね。
松本:はい、AEONさんとの連携による学びも行っています。
5年生ではサステナビリティの取り組みに力を入れているAEONさんと連携して、「みんなが幸せになる消費(エシカル消費)を広めようプロジェクト」に取り組んでいます。
まず単元の前半において、私たちの消費行動が、食品ロスの問題や地球温暖化、自然環境破壊などの環境問題、途上国の貧困や児童労働などの社会的課題と深く関わっていることを、自分事として捉えるようにしました。そして多面的・多角的に解決方法を探索し、「みんなが幸せになる消費」を広めるための自分の考えをまとめ、地域や保護者への啓蒙活動をしました。
次に単元の後半では、子どもたちは単元前半で実行した自分たちの取り組みについて評価し、課題の洗い出しとエシカル消費を広めるための再計画案に基づいて、AEONさんの多大なる御協力のもとに活動を進めました。掲示用のちらしやポップ、ポスター、さらにWebサイトや啓発動画等も作成して、大型販売店内で配付や展示を行いました。また、エシカル消費を広めるための販売会と説明会を、大型スーパーのお客様感謝デー期間(10日間)に合わせて行いました。
上松:コーナーがあるのですね。保護者や祖父母の方々が見に来られるだけでなく地域貢献にもなりますよね。
松本:本校には、子どもたちが運用している学校のホームページがあります。職員でなく子どもたちが毎日更新しているんですよ。
学校での活動などをオンラインで広報することで、社会とのつながりや社会への参画を意識させています。
「毎朝、朝の会にて予定記事を発表~チーム(当番制)で取材~ブログで編集・記事作成~帰りの会にて発表~学級全員で校正~公に発信」という流れで活動しています。
オンラインでの広報活動は、「情報の収集~情報の整理~表現・発信」という一連の情報活用プロセスを踏むため、子どもたちの情報活用能力や市民性・社会性を育成するのに大きく貢献していると考えています。学校の良さを効果的に伝えるための文章や画像等の作成・編集能力のような技術的なことを身に付けるだけでなく、不特定多数が読者であることを想定した内容となっているか、著作権や肖像権などの権利を侵害していないか、等にも意識を向けさせることが可能です。
その他、何か運用上で課題や問題が生じたときには、随時、学級で話し合い、改善しています。これにより子供たちは、自分たちが公的の立場で責任のある発信をしていることを自覚した上で、情報発信しています。
松本: ところで、情報をうまく活用するためには、論理的に言葉を使う能力も大切だと考えていますので、論理的に読み、考え、書くことができるようなドリルなどもしています。日本語の規則を習得し、その規則を使って論理的に言葉を使用できるようにする学習をスパイラル的に行っています。
上松:机の脇に本やノート、文房具などを入れることができるこのクリアケース良いですね。
松本:百円ショップのものですがさっと教科書などが取り出せて良いです。
上松:また、この机の天板が伸びていますけれど、全ての児童にこういうのがついているんですね。
松本:はい、机の天板を拡張するためのキットを取り付けています。これとても良いです。作業領域が広がり、教科書やノート、パソコン等を同時に広げておいてもゆとりがあり、学習がしやすくなりました。また、鉛筆や消しゴムなどの文房具類などの落下を大きく減らすこともできます。おかげで、パソコンの机からの落下がなくなりました。
上松:小学校1年生から使っているんですね。これタッチパネルで良いですね。
松本:はい。1年生では、様々な活動で画像・音声・動画の処理をすることが多いので、タッチパネルは欠かせません。
この授業は算数科で学んだ加法減法計算を活用した問題を、子どもたちが作成するとともに問題を交流して解き合うことで、既習内容の理解を深めることをねらったものです。ICTを活用することで、言葉や図、ブロックなど、子どもたちの表現の幅が広がりました。また、情報の共有や意見の集約などが容易になりましたね。そのため、数の構成を活用して、数の数え方や加減計算の仕方を考えた過程や結果を振り返りやすくなり、そのよさや楽しさを感じながら学ぶ姿を多く見ることができるようになりました。
上松:これは何の授業でしょうか。
松本:こちらは6年生の「言葉に対する自分の考えを書く」という国語科の授業です。本時では、立場が異なる人たちの言葉に対するメッセージを読み、気づいたことを書き出し、思考ツールを使って分類・整理しています。この思考ツールはグループでも全体でも、簡単に共有や同時編集ができるので、対話をより深める手立てとして手軽に活用することができます。
この後もICTを活用しながら、目的や意図に応じて情報を集め、それらを分類したり関係づけたりし、伝え合う内容を検討していきます。そして、事実と感想、意見を区別するなど話の構成を考えながら、論理的に意見文を書くといった流れになります。
最近ではSNSの投稿等でも、論理的な話の展開ができないという事例が散見される。今回取材した原田小学校では、子どもの頃からICTを使いこなすための論理的な思考を高め、それと併せてICTを使いこなしている様子を見ることができた。