社会と繋がり児童が輝くICT教育(前編)-印西市立原山小学校の取り組み-
今回は千葉県印西市にある印西市立原山小学校に伺った。校長の松本博幸先生には、筆者が総務省プログラミング教育推進会議の委員や、ICT教育における超党派議連のアドバイザーを務めた時代から、講演をお願いしたり学校の様子を見せてもらったりとお世話になっている。
原山小学校校長 松本博幸先生
原山小学校は2020年3月にGoogle for educationの遠隔学習プログラムに採択され、5、6年生に1人1台ずつのChromebookが導入された。
さらに10月には印西市の情報教育推進指定校となり、全学年に1人1台の端末導入が行われた。それによりGoogle for educationはもちろんのこと、ロイロノートやミライシード、Adobe Sparkなどを次々と導入した。
上松(筆者):今回の視察は、全ての学年、全ての教科でパソコンを使っているということでお伺いしたのですが、正直、子どもたちからパソコンの使用方法に関する質問はほとんどなく、相当使いこなしているようで驚きました。
松本博幸先生(以下、松本):本校はただ単にパソコンを使うだけではありません。世界や日常生活に目を向けて、そのための課題解決として様々な目標を設置して具体的活動を計画し、解決するための活動にICTを活用しています。
上松:具体的にはどういったことをされるのでしょう。
松本:例えば「アフリカの貧困や飢餓を無くすためにはどうしたらよいか」を考えて解決のための行動をしたり、持続可能な生活ができるよう給食に出る牛乳の紙パックをリサイクルしたり、古着を回収するなどの取り組みをしています。そのために、ICT関連企業や商業等の地域関連企業、ユニセフ・JICA等の機関、シビックテック活動をしている団体との相互連携を図りながら活動を進めるようにしています。
上松:すごいですね。目標を持ってICTを活用するということはモチベーションに繋がりますよね。児童の皆さん、皆、とても落ち着いていて授業に集中されていましたね。やる気があるように見えましたし、誰一人取り残されているということがなく全ての児童が課題に取り組む様子が素晴らしいです。
松本:そうですね。ICTを基盤として社会と繋がること、そして持続可能な視点を絡めた学びを実現できるよう教育課程の編成を工夫しています。子どもたちの心を育て、各教科で育んでいる資質・能力を相互に結びつけながら、教科横断的な視点で情報活用能力を育成するようにしていますね。
6年生は、ルワンダが抱える課題をSDGsの視点で理解し、地球市民として自分にできる国際協力を実践しています。ルワンダ在住の日本人の方や、現地の子どもたち、国際NGO団体等と様々な交流をしながら、様々な課題を明確にし、自分たちにできることのアイディアを出します。
子どもたちは現在、現地の布(チテンゲ)を使用した小物づくりとその販売による収益金を用いた支援を行なっています。この過程における情報収集や共有、整理・分析、広報等でICTを有効に活用しています。
上松:SDGsですよね。テーマが色々あって、それに沿ってICTを使いこなすという事は素晴らしいですね。
松本:そうですね。ICTを全ての教育活動の基盤として考えているので、学習や生活の課題に合わせて、ICTを子どもたちが自主的・自律的に活用しています。もちろん、学校での生活だけでなく普段の生活においてもICTを活用できるよう、ほぼ毎日、パソコンを家に持ち帰っています。
上松:毎日持ち帰らせない学校が話題になっていますよね。家で壊してしまうことを懸念しているのでしょうか。
松本:破損や紛失の懸念があるのかもしれませんが、子どもたちが家で壊す確率はかなり低いと思います。実際に本校では、自宅に持ち帰ったことで故障や破損のトラブルが起きたケースはほとんどありません。
むしろこの時期は持ち帰らせるようにしています。昨年も急に休校がありましたし、急に体調を壊すことがあるかもしれないためです。
例えば、現在新型コロナ感染不安でお休みをしている子どもたちは、オンラインで授業に参加しています。自宅から学校にいる友達とグループディスカッションしたり、全体に発表したりすることができるようにしています。
上松:なるほど。どうりで、児童が座っていない机に先生の方を向いているパソコンが置いてあるな、と思いました。これは有るべき姿ですね。そのためのICTなのですから。
先生もちゃんとパソコンに向かって、教室にいる児童と同じように声をかけていますね。