新鮮野菜がプログラミングで育つ – 会社の得意を活かした植物工場 -【後編】
企業が進化するために必要なこと
前回のコラムでは、植物工場が色々な技術に支えられていることをお伝えしました。
後編では、最新テクノロジーに対する企業の取り組みの必要性について阿部さんに伺いました。
植物工場をスタートしたきっかけ
上松:貴社は空調設備の会社というイメージがありますが、このような植物工場まで関わっておられて驚いています。
阿部:もともと新潟県に工業技術総合研究所のコンソーシアムがあり、工業の技術を農業に転用しようという動きがあったんですよ。そこで当時、弊社の役員が興味を持ち参画したのです。
上松:興味があるといっても結構ジャンルが違うような気がするのですが。
阿部:その役員は化学工学を勉強した上で入社し設計課に配属されたのですが、工業技術総合研究所の取り組みに興味があり、この植物工場に関わるようになりました。
植物を育てるためには普通、天気などに左右されますよね。しかし植物工場は環境をコントロールする為、天気には左右されません。
ですから単に植物を育てて売るのではなく、その技術を売るということを念頭にスタートした事業なんです。
上松:こういうノウハウがあると技術が向上していく、という個々の技術をシステマチックに構築するイメージですね。
阿部:そうです、技術の構築をメインとしています。実際、どんどん技術が進化していることが面白いですよ。だから弊社の中でも特殊な取り組みではあります。少人数で進めていますから、本流ではありませんが。
上松:設備管理やメンテナンスに技術が役立っているということが今回わかりました。様々なプログラミング、それもIoTを利用して遠隔で管理できる部署なのですね。
企業の強み、それは進化と様々な研究、そしてチャレンジ
上松:最近企業もDX化していますよね。
阿部:DXを考えるととても進化を感じます。今までやってきた古いことを考えると疑問がありますし、色々なことにチャレンジしていくことの一環ですね。
上松:色々なことということは、他にもあるのですね。
阿部:太陽光発電についてもやっているんですよ。全国で44メガあります。とても大きなところもあり、遠隔監視をしています。けれどもそれも設備管理のノウハウを転用しているのです。
上松:空調システムも遠隔監視できていますから応用できそうですね。
阿部:太陽光発電は投資に近いものでもありますが、普段何気なく使っている電気に対する見方が変わってくることは間違いありません。ピークシフトに対する考え方とか。とにかく電力使用の山を均すことです。デマンドを抑える必要がありますので。
上松:一時的に稼働率が上がってしまう場合ってありますよね。
阿部:そうですね。それが電気料金に跳ね返ってきますから。デマンド制御に対応させる設備を作り、デマンド契約に基づき契約電力を抑える。
つまり、30分ごとの時限の平均値が現在の契約を上回ると、その後1年間の毎月の基本料金が上がりますので、30分時限でどれくらい使うのか予測を立てるデマンド監視システムの仕組みも作っています。
上松:それはすごいですね。こういったシステムにソフトを使うことで快適な環境を創り出すだけでなく、SDGsの観点からも必要だと思います。
阿部:このままだと電力デマンドが昂進しますよ、という時に自動的に空調や照明等の制御を行い、電力使用を平準化し発電や送電設備の負荷も軽減する、実際そういうソフトを作っています。
上松:基本料金が年間を通じて安くなるというソフトが存在するんですね!素晴らしいです。世の中のためになることを積極的にやっている会社というイメージに変わりました。
教育の必要性
上松:先ほど工場を見学したら若い人もいらっしゃいましたね。レタスを収穫されています。雇用も生まれていますね。
阿部:新潟大学ビッグデータアクティベーション研究センターという組織が新潟大学にあるのですが、学外運営委員として参加させていただくと教育の重要性を感じます。やはりこういった最新の技術と教育を繋げて考えなければ、将来の雇用も考えられないと思います。
上松:今のことは未来のことに繋がりますからね。
阿部:私は最初、会社で空調機等の修理をやっていました。そこでPLCという工業用のコンピュータを使っていたのですが、現場でデバッグしソフトを直したことから適性を買われ配置換えとなりました。その後、30歳過ぎて情報処理の資格を取得したりコンピュータのことを勉強し始め、弊社独自の監視制御システム等のソフトウェアを作ってきました。
上松:色々なことを経験されましたね。
阿部:はい、良かったです。会社に入って40年以上、あらゆる場面で勉強している人はいます。今は新しいデータサイエンスの勉強もしていますし、機械学習の勉強は若い人と一緒に受けています。新しいことを学ぶのは楽しいですね。
実はハンダの作業で指先も色々と鍛えています。基板を修理する時のために。ハンダ付けというのは昔から行っていますが、最近の基板にあるたくさんの足を持つIC等を外す練習をしています。付けるのではなく外すのが難しいからです。
上松:色々なことが仕事にも活かされていますね。
阿部:グローバルな見方が大事だと思っています。日本に合わないと言う方もいるけれども、海外の優秀な人材にも柔軟に見習っていかなければならない。少子高齢化で人口が減ってきていますしね。また、子どもたちが今無い職業につく可能性があるので、柔軟な対応力を育てる必要性が高くなってきていると思います。
上松:教える先生がそれに対応することが重要ですね。
菱機工業株式会社 概要
設立から67年を数え、創業当時のアイスクリーム製造装置の販売から始まり、生鮮食品の安全衛生への貢献、大規模空間の空調設備の設計製作へと、冷凍冷蔵、空調技術をベースとした事業を展開してきた。
高度経済成長に伴う建設ラッシュの需要には空調に加え給排水衛生分野にも事業領域を広げている。
今はコンピュータ技術を取り入れながら設備のIoT化なども推進し、ソーラーパネルなどのエネルギー事業や再生可能エネルギー事業に参入している。
ホームページURL: http://www.ryokikogyo.co.jp/
60年のあゆみ: http://www.ryokikogyo.co.jp/common/pdf/ayumi.pdf
事業内容
空気調和設備の設計・施工
給排水衛生設備の設計・施工
防災設備の設計・施工
クリーンルームの設計・施工
自社開発“RiCS”システムの適用と開発
その他の冷熱関連・融雪設備
再生可能エネルギー 太陽光発電所建設