新鮮野菜がプログラミングで育つ – 会社の得意を活かした植物工場 -【前編】
今回は菱機工業株式会社の子会社「RYOKI PLANT FACTORY浦佐合同会社」の植物工場を見学した。こちらは2016年に植物工場システムの研究開発施設を作り、レタスや様々な野菜を栽培している。
野菜がスクスクと育つ様子を見て、テクノロジーの進化を垣間見ることができた。
筆者を案内してくださったのは、菱機工業株式会社に40年勤務されている阿部さん。責任者は谷口さんという方で、工場の詳細やパソコン画面でプログラミングを行う様子も見せていただいた。
光や水の状態を良い状態にするノウハウ
上松:すごくたくさんの新鮮野菜がありますね。意外と色々な種類があるんですね。
谷口:野菜をパックにして地元のスーパーに卸しているくらいの量がありますよ。
上松:新潟県は県単位だと食料自給率が100%なのですが、東日本大震災の時にスーパーの品揃えがスカスカになってしまい、なんだか心配でした。
谷口:ここでは、大学の先生の研究室と一緒にいくつかの共同研究もしています。もともと京都大学農学部出身ということもあり、この工場を担当しています。
植物工場には様々な技術とノウハウがあります。例えば、根っこの老廃物が養液配管に沈着するという一例だけでなく、課題はたくさんあります。農学部に限らず、工学部などにも色々と聞いています。
植物体が基本的に緑色なのはなぜでしょうか。これは赤い光と青い光しか使わなくても、それ以外の色を反射するので緑色に見えるのです。普通の蛍光灯ではなく、赤色発光667ナノメートル*の発光ダイオードが入った化合物の特殊な光でなければなりません。
- 1ナノメートルは10億分の1メートル
上松:かなり専門的な知識が必要なんですね。
阿部:この領域ではオランダがかなり進んでいます。トマトなどもオランダは日本の反収の3倍くらいと聞いています。苺の害虫を捕るのに、天敵としてダニを外国から輸入する事例もあるのです。
谷口:苺の場合、普通は受粉するのに人手がいります。ミツバチでやれば良いのですが、紫外線カットの光を使う工場内では生殖行為ができないのです。しかし外国のマルハナバチはこのような光でもOKです。
阿部:苺を育てている方はかなり苦労されていますね。新潟では廃校になった小学校を活用した苺の植物工場で、栽培にマルハナバチを使っているんですよ。
谷口:日本だけでなくニューヨークでもけっこう人気なんです。苺一個だけで1万円するものもあるようです。
上松:すごいですね。日本の果物って美味しいですよね。苺はもちろん、マンゴーなども。北海道で作っている事例もあります。
このあたりでは、温泉熱を使ったマンゴーがありますよね。新潟ではシャインマスカットも作っていますね。
農家の方も、米作りより果物の方が良いとおっしゃっていました。
谷口:植物工場で栽培できる作物にはいろんな種類があって、ケール、サニーレタス、辛いルッコラ、バジルなどがあります。2段目はレタスの苗です。レタスは種を蒔いてから36日間、バジルは54日間もかかります。結構、葉っぱが密でも大丈夫なんですね。
上松:他に何か工夫されていることはありますか?
谷口:この工場とは別の場所で、雪氷熱、地中熱を利用したコンテナ型植物工場での栽培を行っています。
植物工場は、照明熱の為に1年中冷房が必要です。雪が降るまでは地中熱を利用し、雪が降ると堆積させた雪の上を断熱材のように籾殻(もみがら)で被覆して保存します。
夏季の冷房時期には、この熱を利用して電気は使いません。ワインセラーや八海山のお酒の保存には雪室がありますが、融解熱をできるだけ活用しています。このあたりはどこの家でも雪が必ず降るので、生産したお米を雪室に入れている家もあります。
上松:雪国だったらどこの家でも地下室を作れば良いのにと思いました。
後編では、企業の進化に必要な最新技術について、また、将来の雇用を見据えた教育の重要性についてもお話いただきます。