教育連載コラム―未来への戦略-

VRで価値を可視化する-記憶を紡ぎ復興に生かすICT【後編】

前回は、川上さんが金浦空港で首里城消失のニュースを見た2019年、文化財の保存に関するワークショップをやっていて、写真から3次元復元するモデルが既にあったことをアイデアとしてこの首里城のデジタル復元プロジェクトを始められたというお話まで伺いました。

上松:川上さんは東京大学の情報学環にいらしたことがあったんですよね。私も20年前に東京大学の情報学環のメルプロジェクトに関わったことがあり、色々なプロジェクトがあったのですが、そこにさまざまな分野の方々が入っていて、分野横断型の場所は素晴らしいな、と思い今に至っています。
川上:そうですね、メディアや人文学など多分野の先生方からの影響がかなりあると思います。さまざまな人の記憶や想いに価値があると信じられましたし、そのようなものが込められた写真を使って3次元モデルを復元してみたら、何か、焼失にショックを受けた子どもたちに励みになるのかもしれないという思いがありました。
上松:素晴らしいです。こういった記憶のつむぎ方にICTが貢献するというのは感動します。子どもたちの想いを未来に繋いでいくことができると思います。
川上:1つ1つは小さな何の変哲もないものかもしれないけれども、写真を100枚、200枚、と見ていると何ともいえない気持ちになります。たくさん見ていると、これは本当に特別な場所だということを実感します。

上松:けっこう反響があったと思います。私は朝のNHK総合テレビの生放送で拝見しました。朝ってかなりサッとニュースが流れるのですが、じっくり時間をかけて放送されていました。
川上:とてもありがたかったです。知っていただくのが重要なプロジェクトだったので。リリースから合計して、ウェブサイトへのアクセス数が4万ユーザくらいです。Youtubeの動画も1万回再生されました。

写真の投稿は3400サブミッションが集まりましたが、ユニークなのは3000名くらいかもしれない。首里城の写真はみなさんお持ちでないので、20人に1人くらいでお持ちだとすれば、6万人くらいの方には情報が届いたのかなと思います。
上松:やってみて何かわかったことはありますか?
川上:改めて感じたのは、この建物は職人さんが手作りで丁寧に手をかけて作っているということです。構造も複雑なんですよね。それから、集まった記憶のようなコンテンツの中には地域のアピールができるものがあることもわかりました。
上松:すごいですよね、昔の建物は。私も仕事や家族旅行で行きましたが、確かに、観光のパンフレットを見て現地に行って、歴史書として書かれていることはわかるけれども、本当にそこであった人々の昔のことはわからないですね。

川上:そうなんですよね、写真や個人の記憶をみると、パンフレットには書いてないことがわかりますね。わたしたちのモデルを活用したアプリができないかと、別で行っている活動でも、個人の記憶やエピソードに感じ入るものがあるというお話になりました。
(詳しくは下記にて公開されています。)

みんなで見守る首里城復興プロジェクトブレストミーティングレポート(1回目)https://note.com/supportshurijo/n/nc36a23538b61