教育連載コラム―未来への戦略-

ワーケーションとICT教育【後編】自律性、自主性を持てる子どもたちの未来に必要な学び


今回の後編では、前回に引き続き竹内義晴さんへのインタビュー内容をご紹介する。ワーケーションなど働き方の変化に伴い、教育現場で大切になってくるものとは一体どのようなものだろうか。

自分らしく働くために
上松:教育についても自律して自主性を持ってどんどん学んでいくというのがアダプティブな学びで大事ですね。1人1人がパソコンを持つことの意義がそこにあります。
竹内:今の時代、ITはもはや大事なインフラ、なければならないものなんですよね。教科書を丸ごと覚えて、いい点数をとることが学習じゃない。答えのない問いに対して「自分で考える」という時間に費やすことが大事だなと思います。
また、今までのように「職業」や「会社」に自分を当てはめるのではなく、自分の働き方について真剣に考える必要がありますよね。「大きな会社に入る」「安定している」といったことも大切かもしれませんが、自分の強みを活かして、自分らしく働くことが大事です。
また、働き方自体もそうです。今までなら、やりたい仕事をするためには都会に行くしかなかった。でもテレワーク時代の今は、どこにいても学べるし仕事もできます。私自身、しごとのみらいを経営しながら、並行してサイボウズでも仕事をしていますが、場所の制約なしに、複数の仕事だってできます。「働く場所はどこでも良い」というロールモデルになりたいと思っています。
朝からリモートで仕事をして、昼休みに気分転換するために、自然の中で散歩したり畑仕事をしたりする。こういう働き方って、いいなと思っています。仕事の生産性もあがりますしね。

竹内義晴 氏

上松:なるほど、地方移住いいな~と思う人がいると思いますが、仕事の生産性の面でプラスになることが企業もお金を投資する最低限の条件なんですね。

働きやすく柔軟な会社が選ばれる時代
上松:これからの教育ってどういったことが大事だと思いますか。やはりICTありきが良いのでしょうか。
竹内:コロナ禍では教育現場は大混乱したと思いますが、デジタルネイティブである子どもたちはすぐに慣れたという話も聞きます。もちろん、アナログの実体験も大切ですが、オンラインでもできることもあるよね、ということを多くの子どもたちは体験しました。
上松:そうなんですよね、教育の在り方が変化してきますよね。
竹内:学校も就職も「東京でなければ」とか、昔のように「地元を捨てて」などという発想だけではなく、今後は「地元に帰るのが前提」とか、「最初からリモートで」といった働き方に変わってくるはずです。というより、もう、一部の企業ではそうなり始めています。今後は企業側がそういうのに対応しないとなりませんね。働きやすく柔軟な会社が選ばれる時代。地方とか関係なくなってくるのではないでしょうか。
上松:若い人が少なくなってきて企業も若い人の人手不足も課題です。地方の優秀な学生が企業を選ぶ時代になってきたという感じですね。


子どもたちとIT、これからの職業教育
上松:最後に、教育について何かありますか。
竹内:ITを怖がらないでほしいなと思います。たとえばITを使った事件などがあると「ITは危険だ」と子どもたちに使わせないような風潮があります。大切なのは、「危険だから使わせない」のではなく、「正しい使い方を教える」こと。ナイフだって、人に向ければ危険だけれど、おいしい料理はナイフがあるからこそできるんですよね。
言い方を変えると、ITは特別な人だけが使うものではなく、もはやインフラなんです。無理に教科書を丸暗記しなくても、検索すれば答えは出てくる今の時代。情報は検索エンジンに任せて、自分で考えたり、内省したりすることのほうが大切だと思います。

それと、職業観もそうです。ところで、最近の職業教育ってどこかの企業に就職するっていうことがメインですか?
上松:最近は色々な職業教育があるようですが、確かに一流企業に勤めるとか公務員になるとか所属すると親も安心みたいなのって残ってはいるでしょうね。
竹内:「会社に所属する」という働き方も1つの方法ですし、そういった教育も大切だとは思います。でも、自発性、自律性を育てるなら、小さくてもいいから、何かを「作って売る」という商いの教育も必要でしょうね。

働く場所もそうです。「都会の会社」じゃなくたって、テレワークを使えば働く場所には制約がありません。今まで、そういった働き方はふわふわした理想論で、ごく限られた人しかできませんでした。でも、今は違います。「あなたが、働きたいように働くことが可能なんだよ。働いていいんだよ」ということを、子どもたちには知ってほしいですね。
このインタビュー中、筆者はワーケーションの言葉のイメージを修正した。この冬もこれまでだったらお正月に会社の休み通りに休み、帰省ラッシュにもまれて会社に戻るということは少なくなかっただろう。竹内さんは「これまでの仕事にワーケーションを取り入れると、数日は早く帰省するけど、仕事を実家でもちゃんとするという働き方になってくると思うんですよね。」と述べていた。そういった働き方があるということを子どもたちが将来の自分を考える上で今の教育に生かすことがあるとしたら良いことだと感じた。

NPO法人しごとのみらい 農業体験活動の様子

竹内義晴 氏

竹内義晴 氏
https://www.facebook.com/YoshiharuTakeuchi
新潟県妙高市出身。コミュニケーションの専門家、ビジネスコーチ、カウンセラー、ライター。特定非営利活動法人しごとのみらい 理事長。
※しごとのみらい 公式サイトより抜粋。(URL: https://shigotonomirai.com/about/staff , 閲覧日:2021.1.5)