教育連載コラム―未来への戦略-

アクセシビリティの必要性 ―PCは1人1台の時代、全ての人にICTを使いやすく―

去る11月22日、全国の小学5年生から中学3年生が“パソコンを1人1台ずつ使える環境”を整備する案が検討されていることが分かった。聞くところによると、4,000億円の予算がつく可能性もあるという。
日本もいよいよ、海外の先進国並みに1人1台使える日が来るのかと思うと、長年、海外の様子を見てきた立場からは感慨深い。
しかし喜んでばかりはいられない。パソコンの授業は教える側のスキルも必要である。これまでの教授法とは異なるやり方も必要になる。パソコンの破損やセキュリティ、インターネット、著作権の理解などハードルがいくつもある。
このような中で障がいを持つ子どもたちに対しては、アクセシビリティ対応が求められると東洋大学名誉教授の山田肇先生は述べている。

「「次へ」のボタン1つでも使いにくいものがあります。こういう細かい点にも配慮が必要です。目の障がいと言っても全盲、弱視や色の識別など色々と異なりますが、そういう子どものため、サイトにちょっと細工をするのも役に立ちます」
アクセシビリティについて詳しい山田肇先生にインタビューしたところ、そんな細工が施された三菱鉛筆の公式サイト( https://www.mpuni.co.jp/ )を見せてくださった。

ファシリティジャポンは視覚・動作・認識など多様な障がいを持つ人々が使いやすいウェブ環境を提供している。この会社のサイトを開き( https://www.facil-iti.jp/ )、「子どもには少ないですが」と断りつつ、
「“白内障”を選択してみてください」
「セットした瞬間に三菱鉛筆サイトの表示が変わります」
と言われました。

こちらは「白内障」症状に合わせた見え方。画面が黒地になり、テキストも大きくなっている。
筆者がクリックするととても見やすく変化した。ファシリティジャポンを使えば、ディスレクシア(失読症)の子どもたち用の表示もできるようになる。

ファシリティジャポンWebサイトより
世界中で会議や仕事をこなし、色々な情報をキャッチしている山田先生に日本の今後のICTの在り方について伺った。
「日本の学校では、教員によるスマートフォンの持ち込みまで厳しく規制されている。本来行うべき教員への指導徹底を避け、スマホ禁止という安易な決定をするのだから、子どもが勉強にスマートフォンを使う時代はもっと先になってしまう。未だに紙ベースが多く、電子行政でも遅れを取っている」という。
学校からICTを使いこなせるようになることが、リテラシーの向上につながると感じた。

ところで山田先生は情報通信政策フォーラム(ICPF)理事長、行政改革推進会議歳出改革ワーキンググループ委員、高齢社会対応国際標準化の日本代表、科学技術振興機構社会技術研究開発センターでの研究開発領域総括、ドラえもんと一緒に本を書いたりなど、東洋大学名誉教授だけでなく、いくつもの肩書を持っていて様々な活動をされている。

これらの仕事について、マルチでどのように対応されているのか、働き方についても質問してみた。
「ICTの力を使えば、いつでも、どこでも仕事ができるのです(笑)」
やはりそうか!という回答だった。いつでもどこでもICTの力をフル活用されている山田先生。実際、国内外関係なくいつでも山田先生にはアクセス可能で、仕事をご一緒しているととても勉強になる。1人1台になれば、子どもたちも効率よい学習が可能となることだろう。

左より、筆者、和歌山県の仁坂知事、山田先生
最後に、ICPFサイト( http://icpf.jp/ )にはプログラミング教育に関する調査研究レポートが公開されている。これらは今後のプログラミング教育のために参照していただきたい。
(レポートは青のバナーを、リーフレット(簡易版)は橙色のバナーをクリックしてください)