「きのくにICT教育」の取り組み【前編】ープログラミング教育必修化に先駆ける和歌山県
2018年5月に、和歌山県の仁坂吉伸(にさか よしのぶ)知事が記者会見を行った。仁坂知事は、文部科学省の新学習指導要領を先取りし、和歌山県内の小学校・中学校・高校で、系統的にICT教育を行っていくと述べた。
具体的には2019年度から、なんと、和歌山県内すべての公立小・中・高で、独自のカリキュラムと学習内容に基づくプログラミング教育を始めるというものだった。
読者の皆さんもご存じのように、日本では2020年度よりプログラミング教育が必修化されるが、それよりも1年早いスタートということになる。
また、児童・生徒がより高度な技術を学べるよう、県内のICT企業と連携するとのこと。例えば、中学校・高校のクラブ活動に県内企業の技術者を講師として呼んだり、ICT指導員を派遣したりといったことも計画として含まれている。
仁坂知事は強いリーダーシップを発揮し、このICT教育に関する計画のため、県の予算約1億8,100万円を計上した。また、全国からアドバイザーを集めた。
筆者は光栄なことに、2018年度から「和歌山県ICT教育アドバイザー」に就任させていただき、各種会議への参加や、実際の現場である授業の視察などを行っている。
今回はその内容をご報告したい。
ICT教育アドバイザーや県内のIT企業、教育委員会などが集まった会議の場では、和歌山県が抱えている課題が提示された。例えば、“少子高齢化” や “人材不足” である。
和歌山県はこのような課題の解決を進めるために、専門的な知識・技術の習得を支援し、将来、IT分野でリーダーとなり得るような人材を輩出することを目指している。
筆者は、このような課題は他県にもあるため転用できると感じた。
この和歌山県の取り組みは「きのくにICT教育」と名づけられている。
他県に先駆け、コンピュータ等の情報機器の操作・活用方法の習得や、プログラミング的思考の育成を体系的に行い、発達段階に沿って教育のカリキュラムを開発し、実践を行うだけではなく、教員研修も行うという目標を掲げている。
「きのくにICT教育」では、
「身近な生活の中でコンピュータが使われるようになった今、子供たちがその仕組みを知り、使うことが大切である。コンピュータを活用する能力が求められる社会において、プログラミング教育に取り組む必要があるのは自明の理。やるべきことにはすぐ積極的に取り組み、子供の能力・可能性を引き出す」
ということが語られている。
仁坂知事が述べたように、2019年度から県内の公立小・中・高全校でICT教育が行われるが、それより前の2018年度においては、まずモデル校6校で授業案を検証することになった。
和歌山県の取り組みは後編でも紹介する。
【ICT教育の様子:串本町立潮岬小学校】
【ICT教育の様子:有田市立保田中学校】
公開資料
https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/501100/ictforum.html
https://www.pref.wakayama.lg.jp/bcms/chiji/press/300522/300522_2.pdf