教育連載コラム―未来への戦略-

イギリスの教科「コンピューティング」におけるプログラミング教育

イギリスの小学校1年生からある教科「コンピューティング」[1]の授業は実際にどう行われているのか。
ロンドン郊外にあるTownley Grammar校[2]の様子をご紹介したい。
筆者は、日本だと高校2・3年生にあたるA-Level[3]の授業と、小学校6年生にあたる学年のプログラミングの授業を視察。その後、他の授業についても案内役2人の生徒と一緒に教室を移動。ほとんどの授業を見学することができた。

学校案内をかって出てくれた生徒たち

かつてイギリスの学校で児童・生徒がパソコンを使う場面といえば、1995年頃から行われている教科「ICT」の授業であった。そこでは教師がWord やExcelなどのソフトの使い方を教えることがメインだった。
しかし教科「コンピューティング」になってからは、コンピュータの使い方を教えるフェイズは終わったという。
見学した授業では、教師によるパソコンの使い方指導はほとんどみられない。インターネットを積極的に使い、プロジェクト型の授業方法で課題解決している様子がみられた。アカデミックな多角的知識を統合するプログラミング教育に移行していることを実感した。
興味深かったのは教科「音楽」でのプログラミングの授業。また、教科「プロダクト&デザイン」でレーザーカッターを使う木工の授業である。さらに、デジタルストーリーテリングの手法を使ったスクラッチ[4]の授業をここイギリスで初めてみた。

副校長にインタビューしたところ、この学校はもともと豊富なデジタル教材と教育方法を様々提供している。そして、小学校の教師から「プログラミングの授業に児童を連れていきたい」という要望が来るので、受け入れるという。これは児童のためになるのはもちろんのこと、小学校の先生のための教師教育にもなるそうだ。
また、この学校では発達段階に合わせた言語で、段階的・系統的にプログラミング教育を行っている。コンピュータサイエンスの授業では、コンピューテーショナル・シンキングやロジカル・シンキングを培うための言語から様々なテキスト言語へ繋げさせるのだと述べていた。
副校長が「プログラミング教育の成功の鍵は優れた教師の採用だ」と断言していたのが印象的だった。

Townley Grammar校 副校長先生

創意工夫する先生

授業の様子

授業の様子

[1] イギリスのナショナルカリキュラムには2014年度から新教科「コンピューティング:Computing」が入り、イングランドで必修化された。(既に1995年から情報の授業として教科「ICT」が必修化されていた。) 教科「コンピューティング」にはデジタルリテラシー(DL)、インフォメーションテクノロジー(IT)、コンピュータサイエンス(CS)が盛り込まれている。

[2] Townley Grammar 校(参考:http://www.townleygrammar.org.uk/)

[3] 義務教育は日本より1年早くスタートするため、中学校1年は7年生。11歳でセカンダリースクールが始まる。
セカンダリースクールとは7~9年生が Kstage3、10年生~11年生が GCSE。A-levelは12年生~13年生。
GCSEの義務教育終了試験の成績にもとづき、イングランドの学校は全ての順位が公表される。

[4] Scratch: MITメディアラボが開発したプログラミング言語