教育連載コラム―未来への戦略-

ケンブリッジ大学におけるエリート・コンピュータ教育

ケンブリッジ(Cambridge)大学にあるコンピュータラボラトリー(Computer Laboratory)ロバート(Robert Harle)教授にインタビューを行った。今回は情報を専門に扱う学科におけるケンブリッジ大学の事例をお話ししたい。

ロバート教授によれば、学生のプログラミングの学習状況は近年急激に変化しているという。
数年前から英国政府の方針により、小中高の教科Computingの学習範囲にCS(コンピュータサイエンス)が入ったこともあり、大学に入る前の時点で90%以上の学生がプログラミングを経験している。しかし、教科Computingを教える教員が十分な数でないことから、ケンブリッジ大学としてはその学習効果を過大評価はしていないそうだ。

また、いつからプログラミングを学び始めたかは重要ではなく、大学が求めている学生とは「教えられたこと以上に考えることができる人」であるため、プログラミングについては「ある程度やったことがある程度で十分である」という。プログラミングが嫌いになると困るからでもある。

「教えられたこと以上に考えることができる人」を育成するため、大学には講義の他にスーパービジョン(Super Vision)と呼ばれる少人数の授業がある。これはケンブリッジ大学教員1人に1人~3人程度の少人数である。
学生が小論文等を執筆し,輪読ののち感想を述べあうこともある。教員と1対1で話をする貴重な時間である。
1年次は1週間に4時間のスーパービジョンの授業を受ける。しかし、そのための準備時間は、5時間から7時間、時には12時間かかるという。

ケンブリッジ大学のComputer Laboratoryにいる学生の半数は留学生である。彼らの出身国は東欧やバルト三国などの国のトップレベルの学生で占められている。
各国トップクラスの学生が入って来るとはいえ、入学時点ではITスキルにばらつきがあり、大学の高度な授業に慣れるためのウォーミングアップとして、1年生は「プログラミング」「ハードウェア」「理論(基礎理論およびAIなど。実用や活用法も含む)」「数学」の4領域の基礎を習う。

ところで、Raspberry Piはケンブリッジ大学で開発された。Raspberry Pi財団のメンバー3人は今でも大学にいる。プログラミングはJavaとML→OCaml、Python、 SQLである。高校生の頃から、学校で教わらずに家庭でRaspberry Piを扱っていた学生もいる。

学部2年生からはグループプロジェクトを行う。6、7名のグループを組み、企業から年間60時間〜70時間で解決できるようなプロジェクト課題を学生たちに出してもらい、学生たちがそのコンサルタントをつとめる。エリート学生のアイデアが企業に活かされている。

英国はICT教育が教科として1995年に小学校からスタートしている。二十数年を経た今、大学教育は、自動車産業の新しいフェーズに一役かっている。

【ケンブリッジ大学コンピュータラボラトリーの様子】

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