教育連載コラム―未来への戦略-

リアルとバーチャルを横断した新たな共同体から生まれる学び【後編】

前編は丑田さんの「働き方」「暮らし方」についてお伺いしました。
後編では「学び方」についてお話していただきます。

五城目町の風景

上松:地域での学びの環境づくりでは、どのようなことを大事にされているのですか?
丑田:学びって何歳になっても大事だし、射程の広い概念ですよね。学校だけでなく地域コミュニティや自然界にも学びを起動するキッカケがあるし、家でテクノロジーを利用して学ぶこともできるようになってきました。東京ではマーケットもあることで機能分化して、プログラミングスクールとか英語塾とかプレイヤーが細分化していますよね。
田舎に行くとそういった機会は比較的少ないですが、一方で地域の多様な資源を引き出すことで学びが誘発される環境づくりという視点ではものすごい可能性に溢れている、と思っています。
上松:わかります。学校もそうですね、大規模学校だと先生方の仕事が細分化しますが、小さな学校だと1人の先生が1人2役も3役も分掌を持たされてこなさなければならない。でもかえって縦割りでなくてうまくいく事例もあるんですよね。
丑田:そうですね。さらに、「ローカルとローカル」「コミュニティとコミュニティ」を越えることでさらなる学びが創発されていくと良いなと思っています。
シェアビレッジで実践してきた「共同体の拡張」もその仕掛けの一つです。必ずしも「学ぼう!」という感じではなく、「村づくりしよう!」とか「一緒に遊ぼう!」という感じから、地元のおじいちゃんおばあちゃんたちや東京から来る人が共体験する中で結果的に学びが生まれていったりするんですよね。
上松:「暮らし方」と「学び方」のトランス・ローカルですね。
丑田:より「教育」という言葉に近い取り組みとしては、町の小学校の老朽化に伴う建て替えを、住民参加型で進めるプロジェクトのお手伝いをさせていただきました。
住民ワークショップで生まれた建築コンセプトは「越える学校」。学校敷地内の図書室や公園を地域に開放することで、偶発的な出会いが生まれる場づくりを目指しました。何歳になっても学びに来られる場所として「生涯小学校エリア」と名付けられています。

上松:熱中小学校のライバルですかね、10年20年たつと町の活性化がすごくなると思いますよ、きっと。
丑田:笑。地域と学校の境を「越える」のに加えて、地域外との境も「越える」環境づくりもこれから進んでいきそうです。
秋田県の教育留学制度を活用して、移住や転校をしなくても一時的に五城目町の学校に入学できるという仕組みです。
今は学び方が多様化していますよね。現時点ではコロナで受け入れは難しいのですが、今後は1週間でも3ヶ月でもオーダーメイドで期間を決めて留学できるようになると、都会と田舎両方の学校に通う「2拠点教育」も現実的になっていくはずです。
上松:そこは進路が揃っている公教育ならではの良い点ですね。
丑田:公教育だからこそできることと、教育システムの外側でできることを、それぞれの視点から実践していくことで、学びの環境はもっと面白くなっていくと思います。
学校と地域と家庭での教育を、一人ひとりに合う形でデザインしていく「ハイブリッドスクーリング」という考え方も、五城目発の教育ベンチャーが実践しはじめています。
上松:8千人の人口ということですが小学校はいくつありますか。
丑田:小学校は1つしか無いのです。少子化で統廃合して。
上松:そうなると転校も難しいし、学校が閉じてしまったらいじめで悩んでいても逃げ場がありませんよね。その点、この小学校は色々な地域との関わりがあったり留学制度などがあってオープンでよいですね。

上松:熱中小学校のライバルですかね、10年20年たつと町の活性化がすごくなると思いますよ、きっと。
丑田:笑。地域と学校の境を「越える」のに加えて、地域外との境も「越える」環境づくりもこれから進んでいきそうです。
秋田県の教育留学制度を活用して、移住や転校をしなくても一時的に五城目町の学校に入学できるという仕組みです。
今は学び方が多様化していますよね。現時点ではコロナで受け入れは難しいのですが、今後は1週間でも3ヶ月でもオーダーメイドで期間を決めて留学できるようになると、都会と田舎両方の学校に通う「2拠点教育」も現実的になっていくはずです。
上松:そこは進路が揃っている公教育ならではの良い点ですね。
丑田:公教育だからこそできることと、教育システムの外側でできることを、それぞれの視点から実践していくことで、学びの環境はもっと面白くなっていくと思います。
学校と地域と家庭での教育を、一人ひとりに合う形でデザインしていく「ハイブリッドスクーリング」という考え方も、五城目発の教育ベンチャーが実践しはじめています。
上松:8千人の人口ということですが小学校はいくつありますか。
丑田:小学校は1つしか無いのです。少子化で統廃合して。
上松:そうなると転校も難しいし、学校が閉じてしまったらいじめで悩んでいても逃げ場がありませんよね。その点、この小学校は色々な地域との関わりがあったり留学制度などがあってオープンでよいですね。

丑田俊輔 氏 プロフィール
ハバタク株式会社代表取締役/シェアビレッジ株式会社代表取締役/プラットフォームサービス株式会社代表取締役

多世代・多地域がつながり育つシェアオフィス「ちよだプラットフォームスクウェア」、日本IBM戦略コンサルティングチームを経て、2010年にハバタクを創業。新しい学びのクリエイティブ集団として、国内外の様々な領域を横断しながら「共創的な学び」を生み出す。グローバル教育の専門チーム「タクトピア」、皆で持ち寄って育む参加型コミュニティ「シェアビレッジ」、遊休施設を遊び場化する「ただのあそび場」、学びのビル「錦町ブンカイサン」、住民参加型の小学校建設「越える学校」支援等。2021年、共創型コミュニティプラットフォーム「Share Village」を公開。秋田県五城目町在住。