教育連載コラム―未来への戦略-

グリーンエネルギー社会をデザインするPowerX(パワーエックス)【前編】-アイデアを現実化する次世代エネルギーカンパニーとは-

近年電気自動車の利用が進んでいるが、今後の普及に向けた課題として急速充電できるスペースが圧倒的に少ないことが挙げられている。電気自動車で遠出をした際の充電が急速でなく、また、スペースが1~2カ所しかなく先客が居た場合、いったい到着まで何時間かかるのだろうと気が遠くなってしまう。
実際に、筆者が電気自動車に乗って遠出をした際も「帰りまで電気が持つかな」と心配になった。例えばガソリンが無くなったとしても、その場でJAFなどに連絡してガソリンを入れてもらえば直ぐに解決する。しかし電気の場合、すぐに解決できるのか、解決まで何時間かかるのかと気になった。
車だけでなくこれから社会は脱炭素に向け大きくシフトするだろう。地球温暖化の被害をみれば、待った無しの状況である。
そのような中、まずは日本において自然エネルギーを「流通」というシステムにのせ解決しようという会社が現れた。
株式会社パワーエックス(以下、PowerX)である。
PowerXは車の課題だけでなく、脱炭素時代が進んだその先にあるグリーンエネルギー社会における次世代型のエネルギーカンパニーを目指している。次世代の「つくる、ためる、運ぶ」の全てをデザインし、蓄電がもたらす新しいエネルギーグリッドを構築して送電メソッドをクリエイトしている。
今回はこのPowerXの代表取締役である伊藤正裕氏に単独インタビューを行い、未来のスマート社会を牽引する会社のパーパスを伺うことができた。

株式会社パワーエックス本社で筆者のインタビューに答える 取締役兼代表執行役社長CEO の伊藤正裕氏

まずは固定概念を取っ払うことが未来のクリエイトに繋がる

上松:日本の発電方法は今、これまで私が小学校から勉強してきたように火力発電や水力発電、そして原子力発電や少ないけれども地熱発電等々さまざまな種類がありますよね。
伊藤正裕氏(以下、伊藤):これからは待った無しでクリーンな再生可能エネルギーを使う必要がありますね。ただし、再生可能エネルギーはあちこちに偏在しています。
上松:そうですね、それってもったいないですよね。
伊藤:はい。また、偏在する再生可能エネルギーはそのまま使えないという課題があります。例えば九州地方で風力や太陽光でたくさん発電できたとして、東北地方に需要があったとしてもニーズに応じてすぐには運ぶことはできません。
上松:そうですね、これまでは効率良く輸送コストを抑えるため、現地の太陽光発電で出来た電気をそのまま運ぶのではなく、電気分解して水素にしてその水素を運ぶとか、アンモニアなどの化学物質に変換して運ぶという方法が計画されていると思います。しかし水素に変えるときにロスは出ますし、水素やアンモニアは現地のプラントでさらに圧縮ガスか液化ガスにする工程も必要です。水素はそもそも、かなり冷やしたり圧力をかけたりしなければならないので大変ですよね。
伊藤:そうなんです。ですから電気をそのままニーズのあるところに運ぶことを考えています。
上松:なるほど、それが一番シンプルですよね。そのまま電池を運んで行き、さっと繋いで使えるというのは夢の世界のように思います。しかし大型の蓄電ならばかなり貯められそうですが、九州から東北となると大変そうです。また、リアルタイムでどこに電気がたくさんあってどこで電気を必要としているのかは可視化できませんね。
伊藤:そうですね。まずはそのまま化学物質に変換しないで運ぶことと、大型の蓄電池という2つの固定概念を変えました。

上松:普通はあきらめてしまいます、だって、そんな再生エネルギーでできた電気をあちこちに運ぶなんて。大型の蓄電池は高性能なイメージがありますが小型にしたらパワーが落ちるのではないでしょうか。
伊藤:それがレゴのように組み合わせて、現地に必要なだけのニーズに合わせて大きさを変えられるんですよ。
上松:レゴのように組み合わせるっていう発想がすごいですね。大きな車に積むようなバッテリーか携帯のような軽いリチウム電池か、という固定概念で考えてしまっていました。
伊藤:送配電業ではなく蓄電業に参入し、蓄電に特化した未来グリッドの構築を考えています。そして電気運搬船というビジョン実現のために2つのプロジェクトを進めています。
上松:2つのプロジェクトとはどのようなものでしょうか。
伊藤:下記の図のように蓄電池と電気運搬船の2つです。

上松:すごい発想ですね。再生可能エネルギーの大幅導入のために固定概念を取っ払ったアイデア、素晴らしいと思います。テクノロジーの発想とアイデアで解決できることもあると実感しました。
伊藤:もう2025年には運搬船も完成し稼働予定です。遠距離運搬も可能です。
上松:海底ケーブルとかありますよね。
伊藤:ケーブルの場所に頼らず、海に接する場所ならどこにでも電気を輸送できますし、設置や稼働開始までの時間が実は海底ケーブルよりも短くできるんです。
上松:それは良いですね。海底ケーブルを作るとなると距離に応じてコストも相当かかりそうですしね。
伊藤:初期導入コストも安価ですし、売電やグリッドへの放電タイミングも選択可能なんです。なにより災害時に強いです。
上松:パワーエックス社の取り組みは再生可能エネルギーの課題解決だけでなく、災害にも効力を発揮出来る点が素晴らしいですね。日本は災害も多いですし大地震でケーブルが切れてしまったら困りますから。
しかしかっこいいですね。この運搬船。

ただ運ぶだけでなく、クラウドでデータを保存しその結果として柔軟に運用できるところも良いですね。日本の各発電所はそういった点で、もし供給ベースで共有がわかったとしてもリアルタイムでの需要のニーズはフレキシブルに捉えられていないと思っています。
伊藤:クラウドベースでニーズに応じた充放電ができることで2次利用、3次利用も可能となります。

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